中居正広様
【本当にあった怖い話 タクシー】
8月18日、中居はタクシーで都内を移動していた。
最近のタクシーにはディスプレイがついていて、そこでCMが流れている。CMどころか、ちょっとしたミニ番組も流れていたりする。
そのディスプレイに慎吾が登場した。
『お』
『ロウムメイト』のCMで、ショッカー的な衣装を着た慎吾が、労務管理をしようとしている。
余った時間で世界征服をするそうだ。
ふっ、と笑った時、ディスプレイの中から『誕生日おめでとう』と聞こえた気がして、中居は顔を上げる。
すでにディスプレイには、別のCMが流れている。
『…?』
誕生日だから、勝手にそう聞こえちゃってるのか?
首を傾げながら、中居は手元の資料に目を落とした。
中居は一件要件を終えて、いただいた誕生日プレゼントとともに、再びタクシーに乗る。
そのタクシーにもディスプレイがあり、CM等流れているのは同じだが、今度は剛のCMが流れた。
どういうタイミングだと思いながら、TISのCMで、ランプの精的なかぶりものをしているノンキな剛を見ていると、画面の中の剛が、中居を見た気がした。
いや、そういう演出だろと思っていたが、そのランプの精は、『Happy Birthday!』と、確かに言った。
『…っ?』
運転手以外、誰もいないのだが、中居はきょときょとと周囲を見回す。
運転手の名前も、会社も見た。実存するタクシーなのは間違いないが、運転手が仕込みかどうか、判断する術はない。
流しのタクシーを捕まえたのならともかく、打ち合わせ先で呼んでもらったタクシーだし。
そこで中居は予定を変えた。
予定外の場所でタクシーを降り、流しのタクシーを捕まえる。
これでおかしな仕込みはできないはずだ。
しかし、ディスプレーには、吾郎のCMが登場した。
なんで稲垣吾郎を鈴木モグラを組み合わせようと考えたのか、中居にはまったくわからないが、コインチェックのCMは二人の距離が近く、吾郎すげーいやだったろうなー、などと思う。
そして、身構えていた通りに、『コインチェック』というはずだろう箇所で、『誕生日おめでとっ』と吾郎は言った。
確かに中居にはそう聞こえた。
どういうカラクリだと四台目のタクシーの中で首をひねるが答えが思いつかない。
そもそも、こういう放送(?)は、タクシー毎に変更できるものだろうか。いや、仕込みなら可能か。作られたデータを流し続ければいいだけだ。
でも、流しのタクシーでまで…?
そのタクシーのディスプレーでは何も起こらないまま、新宿駅近辺を通過していく。
大ガード近くにはYUNIKAビジョンがあり、18日まで木村のアルバムの映像が流れる予定になっていることをもちろん中居は知っている。
時間はちょうど十七時。
通りすがりい映像が見られるかなと思った中居は。
「…え?」
タクシーの窓は閉まっているから、音声までは聞こえないが、画面に『中居 Happy Birthday』と表示された、気がした。
そんなはずはない。
あるはずがない。
「タクシーだけなら解ったんだよ」
SMAP全体会議用の会議室で中居は力説した。
「都内のタクシーにデータを渡しておいて、俺が乗ったら流してってお願いしとけばできるじゃん」
「できるじゃんじゃねぇだろ!やるわけないだろ!」
東京中のすべてのタクシーが仕込みだった説を、木村が一蹴する。
「中居が今日タクシーに乗るとか、知ってた?」
「知るわけないじゃん!なんで自分の車じゃなかったの?」
「誕生日じゃん。もしかして、乾杯とか強要されるんじゃないかという恐れがあって…」
慎吾に聞かれ、家を出る直前まで自分の車で行くつもりだったことを思い出す。
「じゃあ、無理かー…」
「夢でも見たんじゃないの?木村くんのYUNIKAビジョンに、そんな、中居くんの誕生日メッセージなんかなかったし」
「観に行ったんかい!」
「行くでしょお!」
渋谷区から新宿区まで、吾郎は観に行ったと胸を張る。
「でも、観たんだよ…」
「怖い怖い」
「聴いたし…」
「何それ!ほん怖みたいじゃん!」
剛は楽しそうに笑ったが…。
「色んな意味で怖いな」
「俺が幻覚を見てるっていうのが、一番怖いな」
「健康診断、行ってな」
「行くわ…」
今年の中居の誕生日、それぞれのプレゼントに加えて、最高級人間ドック2日コースが追加されたという。
そんな怖いことになりませんように!
2024年8月18日
お誕生日おめでとうございます。中居正広様
☆中居正広様(お誕生日に寄せて 06年版