香取慎吾くんお誕生日に寄せて

shingo 香取慎吾くん

【第XX回　SMAP全体会議】

「あー、全然違う。全然ずれてる。さすがどんくさいな稲垣さん」
「あのね！一人でこんな長い横断幕、まっすぐ貼れると思う訳っ！？」
会議室の壁に【香取慎吾HappyBirthday】という横断幕を貼るように言われた吾郎が背伸びしたまま振り向いて文句を言う。
「大体、なんで僕がやるわけっ？」
「えー？だってー、稲垣さんの方が、俺より背が高いしぃ～」
わざわざ2mを超える横断幕を作ってきた中居は椅子に座ったまま、右が低いの左が低いのやいやい言っていた。
「別に高い位置に貼る必要ないでしょっ！」
「低かったら見えないし！」
「いいから君も手伝いなさいよ！」
「病み上がりの人間になんてこと言う！」
あっ、と吾郎の言葉は一瞬止まる。
「あー。それはね、それはよかったね、体調よくなってね」
「復帰してからこっち忙しくて。稲垣さんと違って」
「忙しくしてますー！こっちも色々あるんですー！」
「いやいや、連ドラ組の忙しさ見てみろよ。木村なんか、撮影と犬の散歩しかしてねーし」
「散歩しすぎだよね」
「うん。散歩しすぎ」
「後サウナね」
「『整い』すぎ」
うんうん。
「それで草彅よ」
「罠の戦争、面白いよねー」
「あいつ、撮影とユーチューバーしかしてないのに、ユーチューバー稲垣はどこ言った」
「そもそもやる気なかったし！」
「稲垣さんの素敵生活を晒したらいいじゃないですかー、素敵生活～♪」
「絶対やだ…！」
「すぐそうやって謎めいたキャラになりたがる！」
「謎めいてるんです、僕は」
「意外に普通の兄ちゃんじゃん」
「うるっさいなー。はい、もうこれでいいでしょっ！」
横断幕を、あえて大胆に斜めに貼り、吾郎は大仕事を終えたかのようにパンパンと手のひらを打ち付ける。

「ところで、ケーキのほうは？」
「はいはい、どうせヒマだから作れって言われたやつね」
「ヒマだろ？」
「ヒマじゃないですー！」
「ヒマじゃなかったら、何百鉢もある植木鉢に何時間も水やりやってないだろ」
「何百鉢もないし、せいぜい一時間です！」
「…。おかしいだろ」
「…。正直、どうかしてるとは思ってる…」
そんな水やりの合間に作ったケーキは、フルーツ山盛りのタルト。
フルーツがいちいち美味しく美しいのが売り。
「なのに、何このプレートは…」
「くろうさぎでしょ」
「いやいや、慎吾とは違うタイプの闇あるよ！？このうさ…うさぎ…？」
「うさぎでしょう！」
白いプレートに、チョコペンで描かれたそれは、2本のくにゃくにゃした何かが、水たまりのようなぐにゃぐにゃした何かから生えている。
「この赤いのは…？」
「目でしょう！」
「いや、何製…？梅干し？」
「そんな訳ないでしょ！ドレンチェリーでしょ！」
「おまえは、字も絵も下手だなぁ」
「絵に関してだけは絶対言われたくない！」
「いや、俺の画伯なんか、あれワザとよ？俺が本気出したら、ちゃんとした絵描けるからね？」
あっはっは！
吾郎は高笑いし、コピー用紙を差し出す。
「慎吾描いてみてよ」
「はぁ？描けるわ。どっちが慎吾か解らないくらいそっくりに描けるわ！どうせおまえには描けないだろうけどな！」
「はぁっ？俺の方が慎吾よく見てるからね！？コピーしたくらいの慎吾が描けますー！」
「いやいや。どうせななにーの時しか会ってねーくせに！」

「いやー、なごむわー…」
会議室の外で、バースデーボーイ慎吾が言い、木村も剛もうなずいた。
「これこれ、って思うよなー…」
「結局仲良しだよねー」
中居と吾郎の小競り合いを楽しむ会の会員たちは、じっくり鑑賞したいがため、ドアの外で待機を続けていた。
「でも、あの二人が描いた慎吾は見てみないとな」
「いやー、恐怖しかないねー…」
「僕も描こうか？」
手を挙げた剛に、木村は慎吾は首を振った。
「「恐怖しかないからいい」」

しかしその恐怖を上回る恐怖が、中居と吾郎の手から生まれていることに気づくまで、後2分。

忙しい中の誕生日、おめでとうございますですね。
ツアー中のパーフェクトビジネスアイドル取慎吾様。お誕生日おめでとうございます！